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Tropical Disease Archive
ブレア元首相の慈善団体設立
- 2009-02-16 (月)
- Tropical Disease
ガーディアン誌にブレア元首相とその奥さんの慈善団体設立の動きが紹介されていました*1。ゲイツ夫妻が多大な影響を及ぼしたと考えられます。その活動内容は、
Everything from striving for the promotion of women entrepreneurs to encouraging healthy Geordies, eradicating fatal illnesses and bringing lasting peace to the Middle East are to receive the Blairs’ philanthropic touch.
女性企業家の支援から、中東に恒久的な平和をもたらすことまで、多義に渡るようです。ヘルスケアに関しては、以下のような記述がありました。
Run by Ruth Turner, Blair’s former director of government relations, the foundation has a number of key aims, according to its accounts. One is to help faith groups play their part in eradicating malaria, chiefly by encouraging mosques and churches to run training courses to spread health messages. On a domestic front, the foundation is aiming to improve religious literacy among young people through the production of “high-quality educational resources” that will be distributed in UK schools
モスクや教会に健康に関するメッセージを発信するよう促すことにより、マラリアの根絶を目指すとあるのが新しい考え方のように思いました。
熱帯病のように感染の経路が明らかなものについては、その治療だけでなく、予防も重要です。そして、予防は治療以上に多様なアプローチが求められるのではないか?と思っています。正確な知識があるだけでは足りず、それに合わせて普段の生活をかえる必要があるというのが鍵となります。日本を振り返るとわかりますが、健康によくないと知りつつも、ライフスタイルを変えることができず、生活習慣病をはじめとした種々の病気になる人が後を絶ちません。これが予防という考え方の難しいところだと思います。地域に密着した形(この場合は宗教でしょうか)での情報提供はより効果的になると思います。
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GlaxoSmithKlineが発展途上国へ医薬品をより安価で提供することを約束した
- 2009-02-14 (土)
- Tropical Disease
売上高世界第2位の製薬企業GSKのCEO Andrew Wittyが発展途上国へ医薬品をより安価で提供することを約束したという記事が、Guardian誌に掲載されていました*1。具体的には、
- 最も発展途上にある50ヶ国については最低でもアメリカ、イギリスの25%の値段で医薬品を提供する。ブラジル、インドのような新興国に対しては、より利用されやすい状態にする。
- 他の研究者による研究を可能にするために、neglected diseaseに関連する物質、あるいは製造方法の特許についての知的財産はパテントプールに提供する
- 利益の20%は最も発展途上にある国の病院、診療院、そこで働く人々のために再投資する。
- スペインにある熱帯病研究所に他社、NGO、公的機関の研究者を招聘する。
といった四つの約束です。
途上国における医薬品アクセスの問題に関して、年々製薬企業に対する批判が高まっていました。もちろん、人道的な観点からこの批判は甘んじて受けるべきなのだと思いますが、一方でより建設的な道がないのかと思えたのも事実です。しかし、この問題に関して、製薬企業側から、さらには最大手の一社が具体的な提案をすることは驚くべきことであり、その決断は非常に勇敢であると思いました。知財についても、パテントプールに提供するというのは、知財を厳重に守ってきていた従来の製薬企業のスタンスからすると、大きな変化だと思います。
一番最初に手を揚げるのは勇気がいることです。他に続く者がいなければ、この貢献というのは小さなものになってしまいます。しかし、これが最初の一歩となり、製薬業界が新たなパラダイムを築くきっかけになればよいと思いました。こちらでは紹介し切れていない内容もありますので、興味のある方は是非引用元をご覧ください。
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Negllected Diseaseに対する研究開発費はどれくらい?
- 2009-02-06 (金)
- Tropical Disease
PLoS Medicineにneglected diseaseに対する研究開発費がどのようになっているかについて調べた論文が発表されていました*1。この論文中では、全費用の配分、出資元、使途が記載されています。
中でもインパクトがあったのはこの表です。

これを見ると、研究開発費の約八割がHIV、マラリア、結核に使われています。それ以外の病気には十分に出資できていないという現状が端的に示されていると思います。では全開発費用はこのままで、割合だけを変化させればよいのか?というと、そういうわけでもないと思います。三つの疾患が重要であり、集中するのは理由があるからです。ただし、他の疾患への投資も増やしていくことができないか?というのが一つの問題提起になると思います。
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ゲイツ財団が熱帯病の研究に3400万ドルを寄付
- 2009-02-03 (火)
- Tropical Disease
遅ればせながらですが、ゲイツ財団が「熱帯病の治療の研究開発グラントとして3400万ドルを寄付する」ことをダボス会議で発表したようです*1。
この危機的な経済状況下でも、支援を継続しなければならないという考えのもとの決断であると思います。先日発表されたアニュアルレポートにもゲイツ財団もこの不況の影響を当然受けたとあります。
Looking specifically at the foundation, our assets decreased in value by about 20 percent in 2008. I never thought I would say losing 20 percent is a reasonable result, but it is better than most endowments because so many asset classes went down by more than 20 percent in 2008.
しかし、その損害は相対的には小さなものだったと言っています。更に、今年は従来の全資産の5%に留まらず、7%の投資を行なうと発表しています。
Our spending in 2008 was $3.3 billion. In 2009, instead of reducing this amount, we are choosing to increase it to $3.8 billion, which is about 7 percent of our assets.
先進国の経済状況に、途上国が振り回されることは想像に難くありません。しかし、これまでにコツコツと積み上げてきたワクチン配布や医療教育などの支援は一度注視してしまうと、再び根付かせるのが一層大変になると思います。そこに今まで存在しなかったものをその土地に根付かせるにはまさしく不断の努力が必要なのだと思います。少なくともこの発表は支援を受ける国の人々に安心を与えたと思います。
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Neglected diseaseの研究開発費をどうまかなうか?
- 2009-02-02 (月)
- Tropical Disease
Nature Drug Discovery で熱帯病などの新薬に対する研究開発費をどう捻出するか?というテーマで、新たなモデルが提案されていました((Nature Reviews Drug Discovery 8, 91 (February 2009)))。
新しいモデルは
a new fund for R&D for neglected diseases should be established with governments of developed and developing countries, charities and other entities as donors
というもので、複数のプロジェクトを管理する委員会のようなものを設けて、同じ疾患に対する治療薬候補のうちで最良のものを選択し、集中的に資源を投入するというスタイルをとるというものです。
実際、資源は非常に限られています。過去と比べて、今ではneglected diseaseに対する治療薬の開発は活発化しています。
These activities, which have consumed about US$500 million so far, have resulted in 60 projects for a range of neglected diseases, most of which are at an early stage
これくらいの費用とプロジェクトが動いています。しかし、これらの候補が実際にクスリになるためには、
However, a critical concern for these projects is becoming increasingly apparent. An estimate taking into account historical attrition rates indicates that it will take a further investment of at least $1 billion per year in the next 10 years to generate the data required for successful compounds in this portfolio to be registered
とあり、相当の資源が投入される必要があります。これが医薬品開発の資金面で見た最大のボトルネックである気がします。つまり臨床試験には入るまでの研究開発費など、その後の費用とは比べるべくもないのです。
このような現状から、もっとマクロに上記のプロジェクトを管理してやる必要があるのではないか?というのが、今回提案されたモデルの根幹にある気がします。あれもこれもではなく、最も良いものに集中することで成功可能性を高めるという作戦です。
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Open letter from Bill Gates about global health
- 2009-02-01 (日)
- Tropical Disease
ゲイツ財団 (Bill and Melinda Gates Foundation) からannual reportが公開されました。
http://www.gatesfoundation.org/annual-letter/Pages/2009-annual-letter-introduction.aspx
内容は
- Childhood Deaths
- Agriculture
- US Education
- Progress on Polio, AIDS, Malaria
- The Role of Foundations
- The Economic Crisis
から構成されています。自分にとって大変印象に残ったのは、Childhood Deathsに載せられていた↓のfigureです。

このfigureは左が五歳以下の子供の死亡率の変化、右が女性一人当たりの出産数の変化です。つまり、このfigureが意味するところは、「幼児死亡率を下げれば、人口増加を抑えることができる」ということです。子供が自分たちを支えてくれるまで育ってくれるかわからないという状況下で、親はたくさんの子供を生むという決断をしやすいことが背景にあると思います。
この傾向が非常に重要なのは、「ゲイツ財団がしているような活動によって子供たちを救うことができても、その結果として人口が増えています。そうすると結局は増加した人口に対して食糧が不足して、餓死する人が増えてしまう。だから、ゲイツ財団のような活動はそれほど意味のあるものではない」という論調の根拠を覆す可能性があるという点です。(実際この手の議論は、WSJのHealth blogでも展開されていました。http://blogs.wsj.com/health/2009/01/27/channeling-warren-buffett-bill-gates-writes-an-open-letter/)
実は自分自身も同様の懸念を持っていたため、このグラフを見たときは大変驚きました。幼児の死亡率が高い状況では子供の人数をそろえる計画を立てにくいのは当然です。死亡率が改善すれば、その後の育児計画も立てやすくなるのは明らかです。死亡率が減少すれば、計画と言う言葉がしっかりとした意味を持ってくるかもしれません。
たった一つの事実をきちんと認識していないことは誤った方向へ物事を進めかねない。当たり前のことですが、改めてその重要性を自覚しました。
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Neglected Tropical Diseasesへの取り組みはアメリカにとって有効な外交政策になり得る
- 2009-01-31 (土)
- Tropical Disease
Neglected Tropical Diseases誌に、”Waging Peace through Neglected Tropical Disease Control: A US Foreign Policy for the Bottom Billion”というタイトルの論文が発表されていました。
NTDはそれ自体が問題なだけではなく、それにより貧困、食糧問題を引き起こすなど、大きな問題に発展します。また幼少期に感染した場合には、知的な生涯が残るケースもあり、最終的に感染した人は社会的な弱者になってしまいます。
comprise diplomatic “hot spots” for the United States of America, in terms of their volatility and current or recent track record of conflict, or because of their deteriorated relationships with the US Government.All of these nations exhibit high rates of NTDs, with up to 50% of the populations living in conflicted areas suffering from one or more NTD.
アメリカ政府との関係が良好でない等の”hot spot”と呼ばれるサラハ以南のアフリカ地域では、全人口の50%以上の人がNTDに苦しんでいます。
medical diplomacy is “the winning of hearts and minds of people in the Middle East, Asia, Africa, and elsewhere by exporting medical care, expertise, and personnel to help those who need it most”
このような状況を考慮して、NTDに苦しむ人たちを救済することができればその人たちの心を掴むことができるだろうとあります。
control or elimination of several NTDs, including ascariasis, trichuriasis, lymphatic filariasis, trachoma, and onchocerciasis, can be achieved for approximately US$0.50 per person per year, a fraction of the costs for antiretroviral treatment for HIV/AIDS or direct observed therapy of tuberculosis
一部のNTDの治療は一人当たり年間50セントであり、費用の面でも効率的です。
軍事力の拡大を進めることで、紛争を解決するというのも一つの方法論なのだと思いますが、それは余りに生産的でない気がします。それはwin-loseあるいはlose-loseの関係しか築けない気がするからです。この点は本論分中でも以下のように皮肉られています。
In practical terms, this means that the entire at-risk populations of war-torn areas and areas of conflict in sub-Saharan Africa listed in Table 1 could be treated for one year at roughly the cost of one or two F/A-18 Hornet fighter jets
そこに費やすための資金で救える人がいて、更にそのことがアメリカという国に対する感謝と理解につなげるという方法は両国にとってメリットがありますし、民衆の草の根の支持を得るのに極めて有効な方法ではないかと思います。
これは舵取りの問題なのだと思いますが、政権の代わった今であれば可能である気もします。オバマ大統領にはこれまでと異なる方法で対立している諸国との対話と理解に務めてもらえればと思います。
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The Priority Review Voucher Program
- 2009-01-26 (月)
- Tropical Disease
昨年末のことになりますが、FDAがThe Priority Review Voucher Programのガイドラインを発表していました。The Priority Review Voucher Programの内容は以下のようになるそうです。
The Priority Review Voucher Program creates a potentially powerful new incentive for investment in the development of new drugs and vaccines for neglected tropical diseases.
The U.S. Food and Drug Administration will award a priority review voucher (PRV) to the sponsor of a newly approved drug or vaccine that targets a neglected tropical disease such as malaria, tuberculosis, and African sleeping sickness. This voucher, which is transferable and can be sold, entitles the bearer to the priority review for a future new drug application that would not otherwise qualify for priority review – potentially shaving off four to twelve months from the standard FDA review.
特定の熱帯病に対する治療薬を開発した者に対して、優先審査のバウチャーチケットを与えます。そのチケットを使うことで、他の開発中の新薬も優先審査を受けることができるようになり、上市までの時間を短縮することができ、結果としてより大きな利益をもたらすことができる、というものです。
ただ、これはアメリカ国内で販売の意志のないような製品についてもバウチャーをもらうことができるのかがわかりません。けれど、下記ブログによると恐らく対象となるのだろうと解釈しています。
Articles critical of the PRV program have appeared in the New England Journal of Medicine (NEJM), on Huffington Post, and, most recently, in a blast Healthnet email sent by Medicins Sans Frontieres (MSF). The last two of these were prompted by the Swiss pharmaceutical company Novartis applying for FDA approval of its antimalarial Coartem. The criticisms argue that Coartem is already WHO prequalified and sold in over 80 countries around the world, and that Novartis is only applying for FDA approval to obtain a voucher, with no intention of selling it in the United States.
http://blogs.cgdev.org/globalhealth/2008/12/in_support_of_the_pr.php
熱帯病の多くはアメリカでも限定的なニーズしかないと思うので、このような状況がむしろ常態化するのではないか?と思います。ガイドラインによると対象の候補としてあがっているのは、以下の疾患のようです。
• Tuberculosis
• Malaria
• Blinding trachoma
• Buruli Ulcer
• Cholera
• Dengue/Dengue haemorrhagic fever
• Dracunculiasis (guinea-worm disease)
• Fascioliasis
• Human African trypanosomiasis
• Leishmaniasis
• Leprosy
• Lymphatic filariasis
• Onchocerciasis
• Schistosomiasis
• Soil transmitted helmimthiasis
• Yaws
• Any other infectious disease for which there is no significant market in developed nations 126 and that disproportionately affects poor and marginalized populations, designated by 127 regulation by the Secretary
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熱帯病の予防を家族に任せない
- 2009-01-24 (土)
- Tropical Disease
LancetにNeglected tropical diseases and the Global Fund ((
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673609600891/fulltext?_eventId=login&rss=yes))というタイトルの記事が寄せられていました。
その要旨はというと、
There is a recognised need to scale up malaria interventions rapidly if the international community is to meet the targets established in the Global Malaria Plan,1 which include improved access to artemisinin-based combination therapy, intermittent preventive treatment for pregnant women, and universal coverage with long-lasting insecticidal bednets.
各家庭への啓蒙だけでは、熱を出した子供に対して抗マラリア剤の投与がされにくいという報告があるようです。もっとコミュニティに根ざした活動にしたほうが効果的であり、そうしなければGlobal Malaria Planが定めた目標の達成は危うくなってしまうという内容でした。
また、マラリアの予防のみならず、そういった地域では他の感染症のリスクも高いため、ワクチンやクスリの配布は同じルートを利用したほうが効率的だし、普及できる範囲も広がるということも書いてありました。
様々な機構による支援があることは望ましいですが、実はそれぞれが独立していて、もっと効率化できる点も多いのかもしれないなと思いました。企業であれば、そうはいかないかもしれませんが、人道的な活動はより多くの人たちに健康を届けることが共通の目的であると思うので、より良い協力体制を築ける可能性はあると思いました。
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ポリオの根絶に向けた支援
- 2009-01-23 (金)
- Tropical Disease
The Bill and Melinda Gates Foundationはポリオの根絶に向けて$255millionを寄付することを決めたようです*1。
いわゆる熱帯病は患者数は多いにも関わらず、経済的に恵まれない地域に多いことから、製薬企業のビジネスの対象とならず、その治療薬が積極的に開発されていないという問題があります。このような観点から、熱帯病のことをneglected diseaseと呼んだりすることもあるようです。ただし、ポリオの場合は世界的にも根絶が進んでいるようで、neglectedというわけではないと思います。ただ今回の支援の背景には、限定的な一部の地域(アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタン、インド)に集中的に報告があることから、その地域からの根絶を目標とするもののようです。
ポリオに感染した場合にどんな症状を呈するかというと
ポリオウイルスが感染しても、90~95%は不顕性感染(感染後も無症状で経過するもの)でおわる。4~8%はカゼのような症状(発汗、下痢・便秘・悪心・嘔吐などの胃腸症状、咽頭痛・咳などの呼吸器症状など)にとどまる不全型で、これらの臨床症状からいわゆるカゼとの鑑別はできない。0.5~1%が非麻痺型(不全型に髄膜刺激症状が加わり、無菌性髄膜炎となるが、麻痺を伴わない)で、感染者の約0.1%が典型的な麻痺型(弛緩性麻痺: AFP)をあらわすにすぎない。
とあり、極めて重篤と言うわけではないようです。ただし有効なワクチンが存在しているにも関わらず、救われていない人がいる以上はそこに支援をしていく必要があるのだと思います。
*1:http://blogs.wsj.com/health/2009/01/21/polio-fight-gets-630-million-from-gates-rotary-governments/
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